5月15日(木)
2025年5月15日(木曜日)

「セクシー田中さん」ドラマ化問題 小学館、日本テレビ、脚本家のコメント出揃う いずれも亡くなった原作者に対する謝罪はなし

 人気漫画「セクシー田中さん」の作者・芦原妃名子さんが1月29日、栃木県内で死亡したことを受けて、小学館および「第一コミック局」は2月8日にコメントを発表した。芦原さんは亡くなった状況などから自殺とみられている。

 姉系プチコミックで連載中だった「セクシー田中さん」のドラマ版(日本テレビ)について、SNS上で脚本を巡ってトラブルが起きていた。

 小学館第一コミック局はコメントで「当然守られてしかるべき原作者の権利を主張された芦原先生が非業の死を遂げられました」と言及。

 そのうえで、「二度と原作者がこのような思いをしないためにも、『著作者人格権』という著者が持つ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが、再発防止において核となる部分だと考えています」と対策に取り組む姿勢を示した。

 なお、日本テレビは1月29日発表のコメントで「日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら、脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」としている。

 また、ドラマで脚本を担当した相沢友子さんは2月8日、インスタグラムで「SNSで発信してしまったことについては、もっと慎重になるべきだったと深く後悔、反省しています。もし私が本当のことを知っていたら、という思いがずっと頭から離れません。あまりにも悲しいです」と発表。また、同コメントを最後に、自身のアカウントを削除するとした。

 

 小学館や日本テレビなどの関係者は「追悼の意」や「強い悔恨」を表しているが、発表されたコメントに芦原さんに対する謝罪の言葉は含まれていない。


【日本テレビ】コメント全文

芦原妃名子さんの訃報に接し、哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。

2023年10月期の日曜ドラマ「セクシー田中さん」につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。

本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております。

https://www.ntv.co.jp/tanakasan/


【小学館】コメント全文「芦原妃名子先生のご逝去に際して」

 漫画家の芦原妃名子先生のご逝去に際して、芦原先生の生前の多大な功績に敬意と感謝を表し、謹んでご冥福をお祈りいたします。

 ご逝去に伴い、読者、作家、関係各所の皆様にご心配をおかけしていることを深くお詫びいたします。

 『セクシー田中さん』の映像化については、芦原先生のご要望を担当グループがドラマ制作サイドに、誠実、忠実に伝え、制作されました。しかしながら、今回のような事態となったことは痛恨の極みです。二度とこうした悲劇を繰り返さないために、現在、調査を進めており、今後、再発防止に努めて参ります。

 あわせて、芦原先生にご寄稿いただいていた『姉系プチコミック』が所属する小学館第一コミック局の声明がございます。お読みいただければ幸いです。

 引き続き、小学館の出版活動にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。 

小学館

作家の皆様 読者の皆様 関係者の皆様へ

 芦原妃名子先生の訃報に接し、私たち第一コミック局編集者一同は、深い悲しみと共に、強い悔恨の中にいます。

 本メッセージは、我々現場の編集者が書いているものです。

 芦原先生は、皆様が作品を読んでご想像されるとおり、とても誠実で優しい方でした。

 そして、常にフェアな方でもありました。
 
 私たちが語るまでもないことですが、「著作権」と呼ばれる権利には、「著作財産権」と「著作者人格権」というものがあります。

 「著作財産権」が利益を守る権利に対し、「著作者人格権」というのは著者の心を守るための権利です。

 著者の許可なく改変が行われないよう作品を守るための「同一性保持権」をはじめ、「名誉声望保持権」「氏名表示権」「公表権」「出版権廃絶請求権」「修正増減請求権」があります。これらの全ては契約を結ぶまでもなく、著者の皆様全員が持っている大切な権利、これが「著作者人格権」です。

 今回、その当然守られてしかるべき原作者の権利を主張された芦原先生が非業の死を遂げられました。

 ドラマの放送前に発売されました『セクシー田中さん』第7巻冒頭には、2023年8月31日付で先生のメッセージが掲載されています。「原作の完結前に映像化されることに対してどのように向き合ったのか」について、こう言及されています。

 〈まだまだ連載半ばの作品なので、賛否両論あると思いますが キャラやあらすじ等、原作から大きく逸れたと私が感じた箇所はしっかり修正させて頂いている〉

 〈物語終盤の原作にはまだないオリジナルの展開や、そこに向かう為の必要なアレンジについては、あらすじからセリフに至るまで全て私が書かせて頂いてます。恐らく8話以降に収録されるはず。〉

 作者として、ごく当然かつ真っ当なことを綴られる中で、先生は〈恐らくめちゃくちゃうざかったと思います…。〉とも書いていらっしゃいました。

 著者の意向が尊重されることは当たり前のことであり、断じて我が儘や鬱陶しい行為などではありません。

 守られるべき権利を守りたいと声を上げることに、勇気が必要な状況であってはならない。

 私たち編集者がついていながら、このようなことを感じさせたことが悔やまれてなりません。

 二度と原作者がこのような思いをしないためにも、「著作者人格権」という著者が持つ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが、再発防止において核となる部分だと考えています。

 勿論、これだけが原因だと事態を単純化させる気もありません。

 他に原因はなかったか。私たちにもっと出来たことはなかったか。

 個人に責任を負わせるのではなく、組織として今回の検証を引き続き行って参ります。

 そして今後の映像化において、原作者をお守りすることを第一として、ドラマ制作サイドと編集部の交渉の形を具体的に是正できる部分はないか、よりよい形を提案していきます。

 また、著者である芦原先生のご意向を、ドラマ制作サイドに対し小学館がきちんと伝えられていたのかという疑念が一部上がっておりますことも承知しております。

 その件について簡潔にご説明申し上げるならば、先の2023年8月31日付の芦原先生のコメントが、ドラマ放送開始日2023年10月22日よりも2か月近く前に書かれ、そしてドラマ放送開始前に7巻が発売されているという時系列からも、ドラマ制作にあたってくださっていたスタッフの皆様にはご意向が伝わっていた状況は事実かと思います。

 そして勿論、先生のご意向をドラマ制作サイドに伝え、交渉の場に立っていたのは、弊社の担当編集者とメディア担当者です。

 弊社からドラマ制作サイドに意向をお伝えし、原作者である先生にご納得いただけるまで脚本を修正していただき、ご意向が反映された内容で放送されたものがドラマ版『セクシー田中さん』です。

 そこには、ドラマのために先生が描き下ろしてくださった言葉が確かに存在しています。

 ドラマを面白いと思って観て下さった視聴者や読者の皆様には、ぜひ安心してドラマ版『セクシー田中さん』も愛し続けていただきたいです。

 最後に。

 いつも『プチコミック』ならびに小学館の漫画誌やwebでご愛読いただいている皆様、そして執筆くださっている先生方。

 私たちが声を挙げるのが遅かったため、多くのご心配をおかけし申し訳ありませんでした。

 プチコミック編集部が芦原妃名子先生に寄り添い、共にあったと信じてくださったこと、感謝に堪えません。

 その優しさに甘えず、これまで以上に漫画家の皆様に安心して作品を作っていただくため、私たちは対策を考え続けます。
 
 本メッセージを書くにあたり、「これは誰かを傷つける結果にならないか」「今の私たちの立場で発信してはいけない言葉なのではないか」「私たちの気持ち表明にならぬよう」「感情的にならぬよう」「冷静な文章を……」と皆で熟慮を重ねて参りました。

 それでもどうしてもどうしても、私たちにも寂しいと言わせてください。

 寂しいです、先生。

小学館
第一コミック局 編集者一同

https://petitcomic.com/news240208/


ドラマ版「セクシー田中さん」脚本家・相沢友子さんコメント

 このたびは芦原妃名子先生の訃報を聞き、大きな衝撃を受け、未だ深い悲しみに暮れています。心よりお悔やみ申し上げます。

 芦原先生がブログに書かれていた経緯は、私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました。

 いったい何が事実なのか、何を信じればいいのか、どうしたらいいのか、動揺しているうちに数日が過ぎ、訃報を受けた時には頭が真っ白になりました。そして今もなお混乱の中にいます。

 SNSで発信してしまったことについては、もっと慎重になるべきだったと深く後悔、反省しています。もし私が本当のことを知っていたら、という思いがずっと頭から離れません。あまりにも悲しいです。

 事実が分からない中、今私が言えるのはこれだけですが、今後このようなことが繰り返されないよう、切に願います。

 今回もこの場への投稿となることを、どうかご容赦ください。
 お悔やみの言葉が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。
 芦原妃名子先生のご冥福をお祈りいたします。

 2024年2月8日 相沢友子

 これを最後に、このアカウントは削除させていただきます。

https://www.instagram.com/p/C3E7I46PXnv/?utm_source=ig_web_button_share_sheet&igsh=MzRlODBiNWFlZA==

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